検索結果 : 徳川女中衆

黄金の船~儚
黄金の船~儚
「恋心って、いつかは消えてしまうものなのかしら」女主の問いに、彼女は筆を止めた。正直、幾ら女君本人に気にしなくて良いから執筆を続けるようにと言われはしても、はいそうですかと従える訳がない。侍女とはそう
小春凪
八重は、誇らしさと緊張相半ばといった心地で、直接お仕えすること叶った女君の様子、姿を窺っていた。御用を待ち同室で控える、といった今のお役目初日でもある。江戸へ下り、今や名実共に日の本の中心となった江戸
雪華
年の瀬が迫ってくると共に寒気も退っ引きならないものとなってくる、などと毎年思うことを利勝は思った。尤も、問答無用に身を引き締めてくれる、上方特有の寒気は嫌いではない。己の中の濁ったモノー迷いやらつまら
黄金の船~非時香菓
黄金の船~非時香菓
江戸下向以来、明白に徳川家世嗣夫婦を主と定め、日々働いているかずはであったが、流石に侍女達の数も手も足りていない現在は、幾分御正室への心配りが疎かになっていたのかもしれないと反省したのは、主が定例の領
夕菅【下】
口調は常通りではあるが、明らかに目付きや気配が異なると、これは夫婦の間柄であるから敏く御台所は気付いたのだろう、怯えた貌をして口を噤んでしまうのに、将軍は小さく舌打ちしたものの、そのまま御台所の萎縮し
夕菅【上】
城を空けていた城主の帰城ということで、表御殿の侍達や中奥の小姓達だけでなく、奥殿の女房侍女等も忙しく気忙しく立ち働いていた。主君が留守の間、女主人はなるべく良く眠れるようにと寝間には特殊な香を用意し、
風花
海津は年若い女主人の手を取り助けながら、その見事な御殿へと最初の一歩を踏み出した。女主人だけでなく海津自身も非常に緊張していた為、周囲への注意や関心などは殆ど働いておらず、ただ黒々と輝く迄に磨かれた板
無花果【下】
だが自室に落ち着いた夜半、放置状態であった文の差出人の署名を見て、一瞬、孝蔵主は身体中の血の気が引くのを感じた。(な、何故、このような)理由もなくおろおろとし、更には周囲の気配なども窺ってしまう。しか
無花果【上】
孝蔵主が江戸入りしたのは、慶長十九年のこと。既に孝蔵主が後にしてきた西と新たに身を寄せた東の間に、暗雲色濃く立ち籠めていた頃合いであった。実際、この年の冬には、関ヶ原以降絶えて無かった大戦が大坂で起き