検索結果 : 忍びの者達

哮天犬~藤蔓【下】
待つ者にとって、時というものは耐え難い程に長く、動かぬものに思える。とはいえ、日が落ち、夜闇が馴染む迄待てば十分だった。彼等も敵も、闇の中でこそ活動的になる類の者達だ。仲間達だけでなく半蔵も又、己の五
哮天犬~藤蔓【中】
「半蔵っ半蔵っ半蔵っ半蔵っハンゾーッッ」犬か猫の仔を呼ぶように、己の仮の名ー更に言えば、服部家及び伊賀衆にとっては特別な名ーを連呼され、半蔵は巳の吉と顔を見合わせた。がすぐにそれぞれの化生ー巳の吉は庭
哮天犬~藤蔓【上】
「正重ではないか」ふいに掛けられた声に、十蔵は一瞬身を固くしたものの穏やかな笑みを取り繕って振り返った。「これはお久し振りです。左馬之助殿。何故貴殿が斯様な鄙の地に?」「無論、我が殿の御下命により視察
哮天犬~矢車【下】
御内室の手を取り脈を診ているらしき迦葉尼に御内室の介抱は任せ、既に臍の緒を切られた状態で浄められもせず放置されている態の、赤子らしき小さな塊に向かう。十蔵と同じく、十蔵の配下の者達にとっても、ある意味
哮天犬~矢車【中】
「しかし、殿の御子だ。男児かもしれぬのだぞ?捨て置く訳にいかぬ」「……ですが、若殿様が、御方様の為に戦場を離れておられた事は、大殿様もご存じない秘事にございましょう。……公にする訳には参らぬ、かと」「
哮天犬~矢車【上】
後から思い返してみれば、天下分け目となった大戦の前日。見覚えのあるしょぼくれた姿ーしかし見る者が見れば隙無く無駄のない身ごなしと足の運びでまさしく只者ではない、態とらしい程に地味で幾分見窄らしくすらあ
御苑間一部配置換ニ係ル御沙汰
一昨年江城に入輿された将軍家御正室が漸く本丸大奥へ移り住む事となった。『御台所』の移転に伴い、当然、御城の主であり、当代将軍も本格的に座所を本丸へ移動させ、将軍家に仕える者達一同、苔丸のような低い身分
御庭内ニ於ケル遊芸一切ニ係ル御内意
久し振りに明るく賑やかな喚声に本丸御殿御庭が包まれているのに、庭番等はそこはかとない幸福感を覚えた。既に二代様は隠居して将軍職を世嗣の君に譲られ、世は若く清々しい三代様の天下となっている。つまりは将軍
表書院ニ面スル御庭ニ係ル御沙汰
巳の吉は困惑していた。いや大いに弱り切っていた。彼は、今やこの日の本の中心、中核と言うべき『御城』の御庭の管理を一手に任されている、表向きの身分は重くはないかもしれないが、『御城』内においては知る人ぞ
虜【下】
充分と考える程待ってからー気配が分散し、あるいは寝付いた者も居るように感じられたー、才蔵は今や明らかに舟をこいでいる娘の身をそっと引き寄せた。「な、何?」途端ーやはり怯えているのだなと才蔵は納得するー
虜【中】
風魔達ー正確には風魔の残党達ーが彼等の隠れ場に姿を現したのは、日が暮れて後だった。佐助が言っていた『恨み』の為に、おそらく執拗に何処までも仇を追っていたのだろう。それより前、夕刻には下女に用意させた膳
虜【上】
才蔵は内心では大いに不服であったものの、特に反論はしなかった。元々、彼は『仲間』などというものを持つ男ではない。更に言えば、偶々『仕事』を共にする相手などとつるむ事も有り得ない。出来うる限り、口も利き

メニューページ

メインコンテンツ

タグ別

公開日別

外部サイト様への投稿

Popular Entries

その日、秀忠は己が今迄にない特上の上機嫌であることを隠すのに必死であった。何と言っても今彼は忙しい。いや正確に言えば、彼だけでなく更には伏見にいる大名だけでなく民草全て迄皆忙しい。後の世に慶長伏見地震
Read more
ぼんやりと江は薄暗がりの中目を開けた。まだ夜は明けてないらしい、などと考えて、それから未だ己の身が夫に抱き抱えられた状態、更にはその身を深く繋げられた状態だと気付いて独り頬を染めてしまう。(……このよ
Read more
いつものように、江戸に残っている唯一の子である三の姫の様子を見に行きー相変わらずお転婆だが、顔立ちなどはますます父親に似てきたような、彼女の心を暖めてくれると共に胸轟かせるような表情すら浮かべるー娘と
Read more
夜闇は深まるばかりだ。「やっ……やめて、下さい、そんな……」江は懸命に身を捩り、逃れようと努めた。だが年下の夫ーということを常に夫秀忠は主張し続ける。そんなに年上の女が嫌ならば夫婦にならなければ良かっ
Read more
身体を繋げられないのはもどかしいがこの女の為ならば仕方がない、などと自然に思ってしまえる自分を不思議に感じながら秀忠は女を抱き締め、その場所は避けるように身体を動かしていた。だが出来るだけ早く交わりた
Read more

Recent Comments

明けましておめでとうございます!新年早々、新婚時代の新作、うれしいです。今年も楽しみに読ませていただきますね!
Read more
江さんと秀忠さんの新作、うれしいです!これからじっくり読ませていただくのですが、一つお伝えしたくて。PREVIEW、いいですね!もうすぐ公開予定の作品があるとわかると、わくわくします。これからも作品を拝読するのを楽しみにしてます!!
Read more
やっぱり新婚時代の話、大好きです!!ありがとうございます。 秀忠さんびいきの私としては、民部がもう少し秀忠さんのことを認めてくれてもいいのになって思います。立場上もちろん丁重に接してはいますけどね。まあ、徳川家の家臣や使用人達は秀忠さんに忠誠を誓っているわけだから、立場の違う民部は仕方ないのかな。
Read more
新作、読みました!!今回は登場人物が超豪華ですね!信長、秀吉、家康、お市の方まで。3英傑が揃って生きていた時代って、今から考えるとすごいなーと思います。家康公(なぜか呼び捨てに抵抗がある・・・前の文ではしてるけど)視点のお話って初めてですよね?新鮮でした。
Read more
コメントするところが違ってますが、日見始、昨日読みました! 新婚時代のラブラブ話、やっぱりいいです!!ありがとうございました。黄金の船シリーズの秀忠さんは穏やかで思慮深い印象、東と西シリーズの秀忠さんは武士の名門の若君らしく、若々しくて激しさを感じさせますが、どっちも楽しんでます!!これからも作品楽しみにしてます。
Read more

Information

連絡メッセージをご覧になっていない場合は、フッターメニューの をクリックして下さい。

Recent Update

早、朝晩凍るような寒さが沁み入る時節。何とも月日が経つのは早いものだ、などと思ながら、江は冬枯れの詫びた庭を眺めた。江が夫に連れられ、赤子の姫共々江戸へ下り、婚家の本城である江城に入ったのは、夏のこと
Read more
寒い日が続く。だが江は以前よりもずっと冬の寒さというものが好きになった。元々雪は大好きだし、ひやりとした空気は時折辛くはあるものの己の吐く息が白くなったりするのが妙に楽しかったりする。無論己に仕える者
Read more
無事二人目の子が産まれた。子を産んだ妻ー秀忠にとっては大切な正妻であり、また愛おしくも恋しく慕い続けている女、でもあるーは少し沈んでいる。彼女は何の根拠もなく男児が産まれると信じ込んでいた。秀忠は時折
Read more
(秀忠様は、私と離縁しても構わぬと思っておいでなのだわ。いいえ、もしかしたら)寧ろとうに、年上で美しくも淑やかでもない己になど飽きてしまっていて、彼女の方から身を引くのを待っていたのかもしれない、と思
Read more
通常、寝つきが悪く寝起きが異様に良い彼の目覚めは、はっきりくっきりしたものなのだが、その朝は違った。己では否定していたものの、やはり彼も疲労が溜まっていたーあるいは慣れぬ務めで気疲れしていた、のかもし
Read more

Preview

Information(Board)

サイト改装しました! といいつつ、表向きは全く変わらない(ように作った)筈です。 何かおかしいところがございましたら、ご連絡頂けると助かります。
Read more