検索結果 : 徳川家の男達

鶺鴒【下】
「妹が何処にいるか御存知ですか?」ひんやりとしたーだがこれこそ玲瓏と表現すべきなのだろうと秀康は思ったー声で問われるのに、秀康は我に返り、慌てて応える。「いえ。ですが……その先の樫の木に鳥が巣をかけて
鶺鴒【上】
秀康が江城に到着したのは、異母弟の忠吉とほぼ同刻であった。無論事前に示し合わせての上だ。基本的には慶事である。去る五月に秀康の異母弟であり父の世嗣である秀忠が徳川二代征夷大将軍の宣旨を受けた祝賀に、父
空蝉
信吉が木下家の姫を娶ったのは、天正十八年、信吉がー武田家筋の生母及び後見人の意向により既に元服済みで、武田家の名跡を継いでいたー僅か八歳の時の事だ。祝言は単なる退屈で面白く無い儀式との記憶しかなく、た
薫風
父が家督と将軍職を彼に譲るとほぼ同時に駿府を隠居所と定めて腰を落ち着けて以降、父は一見気紛れかつ気の向くままに江戸へ下って来たが、彼の方は定期的にしかも事前に定めた予定の日数の間、駿府に赴き滞在した。
野風【下】
今度こそと辰千代は真剣に元服と初陣を願い出た。既に早逝した弟の代わりに武蔵国を相続しているのだから、己は子供ではないと主張したのだが。「阿呆。そちのような童に国を与えたのではない!徳川一門での所領とす
野風【上】
江城で生まれたものの七歳の年迄基本下野で育った辰千代にとって、城に引き取られる前年に偶々母の許に呼ばれていた際に突然ーと彼は感じていたー上方から下って来て城内に住まう事になったという、兄一家は多大なる
東風
慶長二十年に義利は祝言を挙げたが、祝言を挙げて早々、父や弟等と共に領国である尾張を発った。既に二度目のー最後のー大坂攻めが決まっていたのだ。既に前年の大坂攻めで初陣を済ませた義利は、己では随分と落ち着
白南風
彼が元服したのは、慶長十一年のこと。異母兄の五郎太丸は数え七歳。長福丸自身は僅か五歳の時だった。元服自体よりも上洛の旅や、任官を受けた際の周囲の空騒ぎなどの方が記憶に残っている。自分達兄弟の早過ぎる元
蟷螂の君
唯一人の同母兄が妻を、しかも太閤の養女を娶る事となったと聞いて、忠吉はひたすら喜ばしく目出度い事と先ずは祝賀の文を送った。同じ母を持ち、幼い頃は共に育った年子の兄弟、というだけでなく、忠吉は純粋に兄を
若君の夢占
慶長十七年元旦。元々、寝付きも寝起きも良い国松であったが、目出度き佳き日に相応しく、すっきりくっきりと目覚めただけでなく、何とも素晴らしく晴れがましい心地であった。(母上にご報告しなければ!)先程迄、
波の底にも【下】
普段通り与九郎はその翌朝も夜明けと同時に床を離れ、海へ出た。自分達の行動が大いに周囲ー特に妻に仕える者達ーを誤解させたと気付いたのは、夕餉の膳を妻と並んで前にした際だった。「何だ、この祝い膳は?……何
波の底にも【上】
何年振りの再会だろうか、などと与九郎は思った。無論、わざわざ数えてみなくても彼は明確に知っている。だが知っているということ、何もかもを覚えているということは、決して誰にも言えぬーそして自身の表層意識に

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その日、秀忠は己が今迄にない特上の上機嫌であることを隠すのに必死であった。何と言っても今彼は忙しい。いや正確に言えば、彼だけでなく更には伏見にいる大名だけでなく民草全て迄皆忙しい。後の世に慶長伏見地震
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ぼんやりと江は薄暗がりの中目を開けた。まだ夜は明けてないらしい、などと考えて、それから未だ己の身が夫に抱き抱えられた状態、更にはその身を深く繋げられた状態だと気付いて独り頬を染めてしまう。(……このよ
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いつものように、江戸に残っている唯一の子である三の姫の様子を見に行きー相変わらずお転婆だが、顔立ちなどはますます父親に似てきたような、彼女の心を暖めてくれると共に胸轟かせるような表情すら浮かべるー娘と
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夜闇は深まるばかりだ。「やっ……やめて、下さい、そんな……」江は懸命に身を捩り、逃れようと努めた。だが年下の夫ーということを常に夫秀忠は主張し続ける。そんなに年上の女が嫌ならば夫婦にならなければ良かっ
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身体を繋げられないのはもどかしいがこの女の為ならば仕方がない、などと自然に思ってしまえる自分を不思議に感じながら秀忠は女を抱き締め、その場所は避けるように身体を動かしていた。だが出来るだけ早く交わりた
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明けましておめでとうございます!新年早々、新婚時代の新作、うれしいです。今年も楽しみに読ませていただきますね!
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江さんと秀忠さんの新作、うれしいです!これからじっくり読ませていただくのですが、一つお伝えしたくて。PREVIEW、いいですね!もうすぐ公開予定の作品があるとわかると、わくわくします。これからも作品を拝読するのを楽しみにしてます!!
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やっぱり新婚時代の話、大好きです!!ありがとうございます。 秀忠さんびいきの私としては、民部がもう少し秀忠さんのことを認めてくれてもいいのになって思います。立場上もちろん丁重に接してはいますけどね。まあ、徳川家の家臣や使用人達は秀忠さんに忠誠を誓っているわけだから、立場の違う民部は仕方ないのかな。
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新作、読みました!!今回は登場人物が超豪華ですね!信長、秀吉、家康、お市の方まで。3英傑が揃って生きていた時代って、今から考えるとすごいなーと思います。家康公(なぜか呼び捨てに抵抗がある・・・前の文ではしてるけど)視点のお話って初めてですよね?新鮮でした。
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コメントするところが違ってますが、日見始、昨日読みました! 新婚時代のラブラブ話、やっぱりいいです!!ありがとうございました。黄金の船シリーズの秀忠さんは穏やかで思慮深い印象、東と西シリーズの秀忠さんは武士の名門の若君らしく、若々しくて激しさを感じさせますが、どっちも楽しんでます!!これからも作品楽しみにしてます。
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早、朝晩凍るような寒さが沁み入る時節。何とも月日が経つのは早いものだ、などと思ながら、江は冬枯れの詫びた庭を眺めた。江が夫に連れられ、赤子の姫共々江戸へ下り、婚家の本城である江城に入ったのは、夏のこと
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寒い日が続く。だが江は以前よりもずっと冬の寒さというものが好きになった。元々雪は大好きだし、ひやりとした空気は時折辛くはあるものの己の吐く息が白くなったりするのが妙に楽しかったりする。無論己に仕える者
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無事二人目の子が産まれた。子を産んだ妻ー秀忠にとっては大切な正妻であり、また愛おしくも恋しく慕い続けている女、でもあるーは少し沈んでいる。彼女は何の根拠もなく男児が産まれると信じ込んでいた。秀忠は時折
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(秀忠様は、私と離縁しても構わぬと思っておいでなのだわ。いいえ、もしかしたら)寧ろとうに、年上で美しくも淑やかでもない己になど飽きてしまっていて、彼女の方から身を引くのを待っていたのかもしれない、と思
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通常、寝つきが悪く寝起きが異様に良い彼の目覚めは、はっきりくっきりしたものなのだが、その朝は違った。己では否定していたものの、やはり彼も疲労が溜まっていたーあるいは慣れぬ務めで気疲れしていた、のかもし
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