検索結果 : 徳川家臣団

雪華
年の瀬が迫ってくると共に寒気も退っ引きならないものとなってくる、などと毎年思うことを利勝は思った。尤も、問答無用に身を引き締めてくれる、上方特有の寒気は嫌いではない。己の中の濁ったモノー迷いやらつまら
薔薇の木に薔薇の花咲く
正就は主の命令及び指図通り、同僚等に気付かれぬよう、裏門から庭伝いに主の部屋の前へと廻った。どうやら少し前に邸へ戻ってきたらしく、着替え中であった主は軽く目線で頷いて寄越した。主が身支度を終えた後、縁
辰砂
「これは何です?」江戸城の新しい女主人ーということになっているものの、未だ国主の母君がご存命であり、また国主の妻という訳でもない以上、名目でも実質上でもはっきり『主人』とは言い難いーは、不思議そうに問
かき数ふれば
今日も又、何時の間にか若い主の姿が視界から消えたと気付いて、忠隣は太い眉を思いっきり寄せて不快を示した。途端に、近習等ーつまりは嘴の黄色いひよっこ共だーがびくりと身じろぎし、素早く目線を下げたり、忙し
御苑間一部配置換ニ係ル御沙汰
一昨年江城に入輿された将軍家御正室が漸く本丸大奥へ移り住む事となった。『御台所』の移転に伴い、当然、御城の主であり、当代将軍も本格的に座所を本丸へ移動させ、将軍家に仕える者達一同、苔丸のような低い身分
御庭内ニ於ケル遊芸一切ニ係ル御内意
久し振りに明るく賑やかな喚声に本丸御殿御庭が包まれているのに、庭番等はそこはかとない幸福感を覚えた。既に二代様は隠居して将軍職を世嗣の君に譲られ、世は若く清々しい三代様の天下となっている。つまりは将軍
表書院ニ面スル御庭ニ係ル御沙汰
巳の吉は困惑していた。いや大いに弱り切っていた。彼は、今やこの日の本の中心、中核と言うべき『御城』の御庭の管理を一手に任されている、表向きの身分は重くはないかもしれないが、『御城』内においては知る人ぞ
黄金の船~絵姿女房
黄金の船~絵姿女房
妻の肖像画が完成したとの報せに、秀忠は老中等との談義を中断して急いで絵師が待つ対面座敷へ赴いた。当然背後には何やら文句を言い立てながら老中等がへばりついてきたが気もそぞろである。妻よりも早く絵を見なけ
石動
忠俊は苛立ちと憤懣を露わに、江戸城本丸奥殿内を早足で目的地に向けて進んでいた。忠俊は、主家の若君の傅役に任じられている。通常、男子禁制の達しが遵守されているが、若君の寝殿である別棟ー若君ご生誕の折りに
黄金の船~片喰
黄金の船~片喰
江戸城留守居役を務めている酒井重忠及び忠利の兄弟は、その日も競って御台所の元へと伺候した。互いに今日こそは己が先着しただろうと思っていたのが、謁見の為に通された程良く空気が入れ換えられ心地良い広めの居
帚木
昨年徳川家の五の姫が中宮となられただけでなく、二人目の御子がー皇女であるがー無事お生まれになったとの報せが京から届き、彼等が仕える主君ー今は家督及び将軍職を御嫡男に譲り、一般には大御所と呼ばれているー
日輪の如く
忠世は一つ年下で個人的に親しく付き合っている利勝と共に主家の若君ーとは未だ彼等の心中でついつい呼び習わしてしまう呼び方だ。無論、口には殿としか、出しはしないーにお仕えしている身だが、若君が上方と国許で

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その日、秀忠は己が今迄にない特上の上機嫌であることを隠すのに必死であった。何と言っても今彼は忙しい。いや正確に言えば、彼だけでなく更には伏見にいる大名だけでなく民草全て迄皆忙しい。後の世に慶長伏見地震
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ぼんやりと江は薄暗がりの中目を開けた。まだ夜は明けてないらしい、などと考えて、それから未だ己の身が夫に抱き抱えられた状態、更にはその身を深く繋げられた状態だと気付いて独り頬を染めてしまう。(……このよ
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いつものように、江戸に残っている唯一の子である三の姫の様子を見に行きー相変わらずお転婆だが、顔立ちなどはますます父親に似てきたような、彼女の心を暖めてくれると共に胸轟かせるような表情すら浮かべるー娘と
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夜闇は深まるばかりだ。「やっ……やめて、下さい、そんな……」江は懸命に身を捩り、逃れようと努めた。だが年下の夫ーということを常に夫秀忠は主張し続ける。そんなに年上の女が嫌ならば夫婦にならなければ良かっ
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身体を繋げられないのはもどかしいがこの女の為ならば仕方がない、などと自然に思ってしまえる自分を不思議に感じながら秀忠は女を抱き締め、その場所は避けるように身体を動かしていた。だが出来るだけ早く交わりた
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明けましておめでとうございます!新年早々、新婚時代の新作、うれしいです。今年も楽しみに読ませていただきますね!
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江さんと秀忠さんの新作、うれしいです!これからじっくり読ませていただくのですが、一つお伝えしたくて。PREVIEW、いいですね!もうすぐ公開予定の作品があるとわかると、わくわくします。これからも作品を拝読するのを楽しみにしてます!!
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やっぱり新婚時代の話、大好きです!!ありがとうございます。 秀忠さんびいきの私としては、民部がもう少し秀忠さんのことを認めてくれてもいいのになって思います。立場上もちろん丁重に接してはいますけどね。まあ、徳川家の家臣や使用人達は秀忠さんに忠誠を誓っているわけだから、立場の違う民部は仕方ないのかな。
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新作、読みました!!今回は登場人物が超豪華ですね!信長、秀吉、家康、お市の方まで。3英傑が揃って生きていた時代って、今から考えるとすごいなーと思います。家康公(なぜか呼び捨てに抵抗がある・・・前の文ではしてるけど)視点のお話って初めてですよね?新鮮でした。
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コメントするところが違ってますが、日見始、昨日読みました! 新婚時代のラブラブ話、やっぱりいいです!!ありがとうございました。黄金の船シリーズの秀忠さんは穏やかで思慮深い印象、東と西シリーズの秀忠さんは武士の名門の若君らしく、若々しくて激しさを感じさせますが、どっちも楽しんでます!!これからも作品楽しみにしてます。
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早、朝晩凍るような寒さが沁み入る時節。何とも月日が経つのは早いものだ、などと思ながら、江は冬枯れの詫びた庭を眺めた。江が夫に連れられ、赤子の姫共々江戸へ下り、婚家の本城である江城に入ったのは、夏のこと
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寒い日が続く。だが江は以前よりもずっと冬の寒さというものが好きになった。元々雪は大好きだし、ひやりとした空気は時折辛くはあるものの己の吐く息が白くなったりするのが妙に楽しかったりする。無論己に仕える者
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無事二人目の子が産まれた。子を産んだ妻ー秀忠にとっては大切な正妻であり、また愛おしくも恋しく慕い続けている女、でもあるーは少し沈んでいる。彼女は何の根拠もなく男児が産まれると信じ込んでいた。秀忠は時折
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(秀忠様は、私と離縁しても構わぬと思っておいでなのだわ。いいえ、もしかしたら)寧ろとうに、年上で美しくも淑やかでもない己になど飽きてしまっていて、彼女の方から身を引くのを待っていたのかもしれない、と思
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通常、寝つきが悪く寝起きが異様に良い彼の目覚めは、はっきりくっきりしたものなのだが、その朝は違った。己では否定していたものの、やはり彼も疲労が溜まっていたーあるいは慣れぬ務めで気疲れしていた、のかもし
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